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ところで、買い物って好きですか?【第6回】リアルはとっくにAR

  • 2019/07/02 16:45
  • カテゴリー:買い物

ところで、買い物って好きですか?

【第6回】リアルはとっくにAR

本間理恵子

 観光庁によると、2017年の訪日外国人は2869万人で、過去最高を記録したとのこと。中国が最も多く735万人。

 そんな中国人旅行者にひそかに人気なのが「旅かえる」というゲームアプリです。日本各地の名所を「かえる」が旅をしては、記念写真を送ってきたり、お土産を持ち帰ってきたりする。「かえる」の世話はあまり必要ない、いわゆる「放置系シミュレーションゲーム」。キャラのゆるいかわいさと、自由なペースで日本旅行ができること、日本の名物を知ることができることから中国人に人気が出て、わざわざ「かえる」が訪れた場所に行って「かえる」と同じアングルで写真を撮ったり、名物を食べてみたいと来日するのだとか。

 主人公と同じものを食べたいと言えば、2016年の夏に公開され、大大々ヒットとなった映画「君の名は。」。翌年の1月には「君の名は。」グッズ売り場と同時にカフェが登場し、詰めかけたファンは、主人公が作中で思わずスマホで撮影したというかわいらしいパンケーキや、登場人物が作中で頬張っていたコロッケパンに群がったのです。

 最近では「安室の女」がアツイようです。名探偵コナンの劇場版「名探偵コナン ゼロの執行人」に登場するイケメン「安室透」が好きすぎる女性たちのことです。映画の公開に合わせて全国で設けられた「名探偵コナンカフェ2018」のメニューには、安室透が考えたとされる「安室透の半熟風ケーキ」や「安室透の買い出しクリームソーダ」「安室透のトリプルフェイスフロート」などがあり、「安室の女」たちの心をわしづかみ。

 多くのファンの心をとらえ続けていると言えば、丸善書店のフリーペーパー「honto+」に連載され、ロバート秋山氏が様々なクリエーターになりきる動画も楽しい「クリエーターズ・ファイル」。2017年4月から全国で順次開催された「クリエーターズ・ファイル展」は22万人動員の大ヒットイベントとなり、今年「感謝感謝のおかわり大作戦!」を池袋パルコミュージアムで開催するほど。

 クリエーターの1人、老舗温泉旅館「銀風の塔」の女将「大垣節子」氏の名言「接客はキャッチ&リリース」は、私もセミナーで紹介しています。中でもトータル・ファッション・アドバイザーの「YOKO FUCHIGAMI氏」は一番人気で、既に2冊のムック本を発売。今年の銀座ロフト開業1周年に合わせて来店イベントまで組まれ、モノトーンしか好まない彼女が、なぜか突然黄色のTシャツやグッズをデザイン。その心は、「LOFTの黄色は唯一ゆるせる黄色なの」だそうです。

 昔ももちろんありました。宗像先輩がステキとか、私はオスカルよりアンドレが好きだとか。でも、それはあくまでも2次元。宗像先輩はかっこよすぎて3次元に出てこられるレベルじゃなかったし、たまに、安奈淳がオスカルになってくれても安奈淳本人がステキという話。でも、今は違うんです。容易に2次元が3次元化します。

 ゲームアプリのキャラである「かえる」が実際に日本旅行しているわけがない。「君の名は。」の主人公が食べたパンケーキ? あるわけがない。「安室透」が半熟ケーキを作るわけがない。「YOKOFUCHIGAMI」が存在しないのに、黄色いファッションをデザインできるはずがない……では済まされない時代。なぜか? 今どきは買物もダイバーシティの時代だから。際限なく広がり、深みを増すヒトの欲望を、きめ細かくかなえてあげることが今どきのビジネスなのです。2次元と3次元の境目も、そしてヒトとモノとの境もあいまいになり、AR(拡張現実)型の消費もますます増えることでしょう。

 

shopping6.jpgほんま・りえこ
博報堂勤務を経て、マーケティング・プランナーとして活躍中。
『マンガで〝買物脳〟実践編』(諏訪書房。2500円+税)
 ガス機器を売れるようになれば、もう、売れないものは何もない。 あって当たり前、機嫌が悪くなってトラブらないとその大切さに気づかないのが究極の古女房的無関心商品「ガス機器」。そんな超難関商品を例に、本間理恵子がしたセールス成功へのノウハウを指南。もちろん異業種でも応用可能。

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