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ところで、買い物って好きですか?【第3回】「物販」の呪縛を解き放て

  • 2019/07/02 15:07
  • カテゴリー:買い物

ところで、買い物って好きですか?

【第3回】「物販」の呪縛を解き放て

本間理恵子

 一時期はインバウンド効果などで売り上げが回復した小売業。でも、やっぱり、「なんか最近売れないな……。ネットでみんな買うようになったからなんだな」とぼやいている方、多いのではないでしょうか。

 巨人Amazonは「お客様第一!」の旗をはためかせてどんどん攻めてくるから手に負えないし、楽天もポイント大サービスで太刀打ちできない。しかし、今大切なことは、自分たちが、お客様のどんな「買いたい」に応えられているかをしっかりと分析してみることです。前回、買物行動は、「調達型(buy )」と「ショッピング型(shop )」の2つの要素の組み合わせで考えられることをお話ししました。「できれば最安でさっさと簡単に済ませたい」調達型のサービスを提供しているのか、「わざわざ時間を費やしてでも楽しみたい」ショッピング型のサービスを提供しているのかをしっかりと見極め、とことん突き詰めることが今の時代とても大切なのですが、実際のところ、「どっちつかずで、中途半端」なサービスが多いのではないでしょうか?

 生鮮食品や日々の食材の通販は、商品の足が早いだけに物流拠点の整備の方法、配送の方法など難易度が高い。そんな生鮮食品の通販にも、「お客様のために!」をお題目に「Amazonフレッシュ」が登場しています。「Amazon フレッシュ」はその名のとおり、生鮮食品を宅配してくれるサービスですが、現在のところサービスエリア限定。残念ながら私は一度も試したことがない。

 食材宅配においてもAmazonはいつものように「お客様に対して何を提供できるのか」を明確に提示しています。今、どんどん売り上げを伸ばしている「ミールキット」のページを見てみましょう。「ミールキット」というのは、食材と調味料、レシピなどがセットになっていて、レシピ通りに調理していくだけで、10分程度で料理が完成するというはやりの商品。Amazonのうたい文句は明確に「時短」です。「ミールキットは3つの時間を削減します。①献立を考える時間、買い物に行く時間 ②調理・後片付けの時間 ③食材を管理する時間」

 お客様からすれば、できるだけ手間をかけずに済ませたい買物を、スッキリと調達できれば、お楽しみ部分に時間を費やす気持ちの余裕ができるわけです。先ほどのミールキットを調達していた主婦が、休日には、2週間に1回開催される全国のオーガニック野菜農家が集まるおしゃれなマルシェに子供たちと一緒にでかけ、店主との会話を楽しみながら、あまり見かけることのない珍しくカラフルな野菜を手に入れ、子供たちと一緒に野菜ケーキ作りに興じるなんてこともあるわけです。Amazonのミールキットで売っているのも、おしゃれな休日マルシェで売っているのも、どちらも「生鮮食材」だけど、Amazonが売っているのは徹底した「調達サービス業」であり、休日マルシェが売っているのは、その日、その場所でしか味わえないひと時を楽しむ「ショッピングエンターテインメントサービス業」。今どきは、何を商っていたとしても、「物販」という言葉の呪縛から自らを解き放ち、お客様にどのような「サービス」が提供できるのかをとことん追求できる時代なのです。

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ほんま・りえこ

博報堂勤務を経て、マーケティング・プランナーとして活躍中。著書に『買物脳ー成功する企業になるための5つのキーワード』(主婦の友社)。

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