住まいと投資
- 2018/12/21 17:25
- カテゴリー:住宅
住まいと投資
賃貸住宅投資はアブナイ買物か
サブリースは10年の時限爆弾!
後を絶たない サブリースのトラブル
サブリースをめぐるトラブルが後を絶たない。「アパートを建ててもらえば、こちらで30年契約で一括借り上げし、入居者募集や管理を行います。空室があっても家賃は保証します。固定資産税や相続税の節税にもなるうえ、副収入も得られます」と 言って勧誘する。それはいいと喜んだ地主は銀行などから融資を受けてアパートを建て、サブリース会社に 引き渡す。しかし、契約書にはこう書いてある。「家賃保証は当初の 10 年間。以後、2年ごとに家賃額を見直す」と。これがトラブルを引き起 こし、「被害者」を出している。
契約から10年後、アパートには空 き室が目立ち、サブリース会社からは家賃の減額を求められる。そして「30年間保証すると言ったはずだ」と大家が反発すると、契約解除を盾にはねのけられる。管理経験のない大家は家賃の減額をのまざるを得ず、そこから2年ごとに家賃が下げられ、最後にはローン支払額より少ない家賃しかもらえなくなった……こんな話が続出している。
2016年秋以降、家主からの訴 訟も増え、各地で訴訟や100人を超える規模での集団訴訟も起こされている。中には、新築から10年は変わらないとされている保証家賃を下げられたという訴えもある。
実はトラブルは今にはじまった話 ではない。すでに 14 年には、国民生活センターが広報誌の特集で不動産 サブリース問題を取り上げている。消費者問題に強い弁護士たちが「リスク負担を家主に転嫁するものだ」としてサブリース業者の手法を糾弾 している。
建築費が高すぎる? 家賃保証だけではない問題
15年には、NHKのテレビ番組「クローズアップ現代」でこの問題が取り上げられ、過疎地にアパートが密集して建つ光景や、空室だらけのアパートとローンを抱えて途方に暮れるオーナーの姿、サブリース会社の強引な営業トークの音声が大きな 話題を呼んだ。新聞や雑誌等でも取り上げられるようになり、問題が広く知られるようになっている。サブリース会社は、当然、空室リスクを予想できるはず。では、いったいどこで儲けているのか。
まず建築費でモトを取っている。プロが見ればすぐわかる安普請のアパートの建築費が、注文住宅並みの単価設定だったりする。また、サブリース会社は、関連会社が建築した物件でなければ受けつけないので、相見積もりはない。細かく精査でき なかったり交渉力がない家主は、高めの建築費を払わされることになる。
入居後の補修費やリフォーム費用も、その関連会社で行うことが必須で、高い費用を支払うことになる。それを拒否して契約解除となり、アパートを売る場合、販売手数料もサブリースの関連会社が手にする場合まであるのだ。
これだけ問題がありながら、いまだにサブリースを規制する法律はない。消費者保護を目的とした特商法はあくまでも一般消費者向け。アパート経営者は事業者であり、契約書に判を押せば自分の責任である。
国土交通省の「住宅着工統計」によると、新たに建てられるアパートを含む借家の着工数は、リーマンショック後の11年の28万5832 戸を底に、16年まで5年連続増加。41万8543戸まで増加している。そのうち半数がサブリースだとみられている。空室率が上昇する中、こうしたトラブルはますます増え続けると懸念されている。
金融機関は 賃貸投資に慎重に?
シェアハウス「かぼちゃの馬車」の破綻事件で、サブリース融資に最も積極的だったスルガ銀行の不正融資が発覚した。担保物件の評価額を改ざんした二重の売買契約書、入居 率や家賃収入の偽装、家主の年収や預貯金額の水増しなど、不正は広範 囲に及び、同行の不動産融資総額の半分が不正融資とみられている。そこまでしてもサブリース融資を実行 したかったということだろう。
超低金利下で、土地を持つ地主で担保も取れ、事業性融資なので金利を高めに設定できるアパート建設への融資は、金融機関にとってはおいしい案件だ。さらに、サブリース業者へと顧客を紹介して得られる手数料も大きい。その金額は建築費の3%程度と言われ、1億円の建築費なら手数料は300万円である。利息とは別に得られるので、大きな収入源となる。
だが、一般家庭や家主に住宅ローンを融資する独立行政法人・住宅金 融支援機構(旧・住宅金融公庫)もサブリース融資への対応を変えた。物件の空き家が増えていることから融資の焦げつきを恐れ、18年度から賃貸住宅向けの融資基準を厳しく設 定することとなったのである。同機 構では 17 年度末の賃貸住宅向け貸付 金残高は1兆3946億円にも上っていた。また、日本銀行の統計では、同年度末の個人の賃貸アパート向け 融資残高は実に 23 兆2680億円。こうした全体の貸出し増も歯止めがかかる見込み。
融資額も減っている。日銀の統計によると、サブリース契約によるアパート融資を含む「個人による貸家業」への新規融資額は、18年6~8月期で5603億円。前期比約40%減と、大幅に減少した。
サブリース爆弾を爆発させないために
「サブリース業者はあくどい商売をし過ぎだ」という声もある一方、「30年も家賃が保証されるわけがないことは考えたらわかる。家主は欲に目がくらんだだけだ」という声もある。だが、サブリースというしくみ自体 が悪いわけではない。事業者側の説 明責任と、家主側の自己責任がしっかり果たされていれば、生じにくい問題だ。もちろん、最初から騙す意 図でこのしくみを利用していた業者 に対しては、市場からの退場を強く求めていかねばならない。
サブリースをめぐるトラブルが大いに喧伝されれば、家賃が減額されると知らずに契約し、10年後にトラブルとなる件数は減ることだろう。
しかしそれでも、すでに契約を済ませた物件はそうはいかない。今後の人口減少時代、空き室問題はさらに拡大すると見られている。そんな中、業界大手の大東建託でサブリース契約をした家主は8万人、レオパレス21は5万人とも言われている。
家賃保証の年限である10年を迎える物件はこれから増えていく。その時限爆弾を爆発させないために、事業者がどのような対応をとっていくのか注視していこう。 (本誌特集取材班)