ところで、買い物って好きですか?【第2回】楽しくなきゃ買い物じゃないんです
- 2019/07/02 14:44
- カテゴリー:買い物
「Amazon エフェクト」。Amazonが、あらゆる企業、産業を飲み込むことを示す造語です。アメリカの小売業は衰退しているらしい。レジが存在しないAmazon Goなるショップも今年1月にシアトルでオープンし
ました。
この店舗では、駅の自動改札のような入口でスマホをかざして入店し、整然と商品が並べられた棚から欲しいものをピックアップ、バッグに入れてそのまま退出できるそう。レジ待ちの列でイライラしながら前方を眺める無駄な時間もなくなり、スーパー時短な買物が実現します。Amazon には、このようなショップをネットショップ単体だと難しい食品の流通拠点にするという狙いもあるらしい。着々と世界征服は進む……。私たちはなすすべなく、Amazon帝国に占領されてしまうのでしょうか?
買物脳では、買物行動を2つの要素でとらえています。1つめは、できるだけ性能や機能の優れた商品をできるだけコストパフォーマンス良く、時間効率も良く手に入れられるかを徹底的に追求する「調達型(buy )」の買物行動。買い手の感情が入る余地はなく、商品(モノやサービス)を一番効率的に購入することを追求する行動です。
2つめは、モノやサービスを購入することにより、どれだけ楽しくなれるか、自分が理想としていたイメージに近づけるか、はたまた、モノやサービスの作り手や提供者とどれだけ共感しあったり、絆を深めあったりできるか、さらに売り手やサービスの提供者を支えていく喜びを持ちたいといった、自分の気持ちを満たすことが目的の「ショッピング型(shop )」の買物行動。
この2つの要素は図1のように組み合わさっています。重要なのは調達の買物行動は買物の果たすべき役割の一部でしかないこと。
Amazonなどのネットショップが得意とするのは「調達型」の買物です。自分が欲しいと思った時に、スマホを操作、最安値商品を選択して購入、しばらく待っていれば、家にいながら商品を手に入れることができるというコスパ&時短マックスな調達行動。「注文する手間」を省く必要もあるため、Amazonには「Amazon定期便」や「ダッシュボード」という便利機能も準備されており、まさにオートマチックに生活必需品を淡々と調達できるサービスが整いつつあります。繰り返しますが、調達は買物が果たすべき役割の半分に過ぎないのです。今のリアル店舗の嘆きは、ネットショップが調達の役割を完璧に果たしつつあるうえ、さらにショッピング領域にまで触手を伸ばそうとしているのに、自分たちの役割を変えることができていないことにあります。リアル店舗の役割は、ネットショップの登場によって、「リアル(実)」店舗と呼ばれるようになった瞬間から、単なる物販からサービス業、エンターテインメント業へとすでに切り替わっているのです。
ネットショップが得意なのが調達なら、リアル店舗の強みはショッピング。リアル店舗に足を運ぶことはコストとして意識されますから、そのコストをかけてでも、その場に行く価値があるかどうかをお客様は見極めているのです。
売り場は「買い場」ではない。ネットショップでは実現できない「お楽しみの場」で勝負。大谷翔平が「Showtime !」なら、こちらは「商タイム」。大いなる
「Showmanship」=商人魂で打って出ましょう。
買い物脳5つの法則
①男脳は成果を求め、女脳は快楽を求める
②男脳はスペックを買い、女脳はイメージで買う
③男脳は理屈で買い、女脳は直感で買う
④男脳はモノでイキイキ、女脳はヒトでイキイキ
⑤男脳は征服を買い、女脳は共存を買う
ほんま・りえこ
博報堂勤務を経て、マーケティング・プランナーとして活躍中。著書に『買物脳|成功する企業になるための5つのキーワード』(主婦の友社)。