ところで、買い物って好きですか?【第1回】お買物もダイバーシティ
- 2019/07/02 14:29
- カテゴリー:買い物
ところで、買い物って好きですか?
第1回;お買物もダイバーシティ
本間理恵子
昔々、今から20年近くも前のことです。「それって、何に使うの?」。私が買ってきたバッグをしげしげと眺めていると、夫がそう言い放ちました。何に使う? 私が「かわいいデザインだったからね……」と口ごもっていると、「この前、似たようなの買ってきたような」との追い打ち。夫は、「使いみちも考えずに似たようなデザインの(私にとっては全く別物ですが)バッグをカワイイとかいう理由で買ってくる人」が世の中に存在していることに心底呆れたようでした。
私は買物好きだ。経験も豊富な私が思うのだから間違いない。私のようなはたから見るとバカバカしい買物をしている人たちは多いはず。カワイイというだけで買ってしまったり、ふと入った店で「モノとの出会いは一期一会だから」というわけのわからない言い訳をひねり出して指輪を買ったり。男性たちにはしょせん理解不能な買い方も世の中に立派に存在しているのだということを、男性陣に説明できるようにせねば。
なぜ、説明しなければならないのか。遅ればせになりましたが、私は1988年に広告会社に入社、販売促進を担当する部署に配属されました。入社動機は、「オマケが作りたい」(だけ)でしたので、願ったり叶ったり。配属後は、販促の基礎を学ぶことになります。「消費者は、今買うべき合理的な理由を与えることで購入に至る」といったことも教わりましたが、ペットボトルに小さなオマケが付いているだけで買い漁り、飲みたくもない果汁飲料をちびちびすすったりしている私には「合理的な理由」の意味がわからない。
その当時は、男女雇用機会均等法が施行されて数年でしたので、周りは圧倒的に男性ばかり。女性向けの商品の販促企画を作っても、「それだと、本間は買うかもしれないけど、他の女性たちが買うかどうかわからないよね」と一蹴される。「なぜ、この企画(男性の琴線には触れない企画)で女性が買う気になるのか?」を、ぜひわかってもらいたいと思ったわけです。
『話を聞かない男、地図が読めない女』という書籍がベストセラー2位(トーハン調べ)になり、男脳、女脳という言葉が流行った2000年当時、私はプロジェクトメンバーと共に、様々な買物についてのコメントを分析、『買物脳』という本にまとめました。今どきはFacebookの投稿内容を分析すると、90%以上の確率で性別を当てるアルゴリズムも開発されているようですが、その当時は、寄せられるコメントをひたすら読み込み、男性しか発言していない内容、女性しか発言していない内容に分類していくという地道な作業。その結果、男女の買物行動の違いは5つの視点で理解できることがわかりました。(図1参照)
でも、男脳を納得させるには「数字」が必要。普段の買物行動をチェックすることで買物脳度を判定できる買物脳度テストを作り、データを取ってみました。買物脳度は、男脳的な要素と女脳的な要素の組み合わせ(買物脳度〈%〉=男脳度〈%〉+女脳度〈%〉)で表すことができます。男女それぞれの分布は概ね図2のような感じ。いわゆる正規分布というもので、買物脳度50%あたりが一番多いのですが、男女で分けてみると、微妙に左右に分かれます。自分とは異なる価値観にも目を向け、理解しようとする姿勢が大切な現代、買い方の違いも、お互いの価値を認め合うきっかけになればよいと思います。