学生に起業のチャンスを提供 「学生ベンチャー食堂」
- 2019/05/29 14:50
- カテゴリー:教育・文化
学生に起業のチャンスを提供 「学生ベンチャー食堂」
千葉商科大学「彩食菜(いろどりしょくざい)」
秋も深まってきた2018年10月4日、ある飲食店のオープニングセレモニーが行われた。千葉商科大学 (市川市、原科幸彦学長。以下、CUC(キャンパス内の食堂にある「彩食菜」である。栄養バランスと彩りを考えた弁当を提供するこの店のオ ーナーは、木村海音(あまね)さん。同大学の商経学部経営学科2年生だ。「彩食 菜」は、学生が学内で出店・経営する、CUCならではの取り組みである「学生ベンチャー食堂」によってオープンした飲食店である。
プロと変わらない学生経営者
「実学」を教育理念に掲げるCUCでは、〝体験する学び”の支援体制の一環として、11年に「学生ベンチャ ー食堂」をスタートした。島田晴雄前学長が発案したもので、学内応募の上、厳正な選考を通過した3店舗が、大学から1年更新の出店権利を得て営業を行う。
メニューは牛丼 、生姜焼き弁当 、魚のフライ弁当の3つ。
栄養、ボリューム、価格のバランスに配慮した。
学生とはいえ、甘えや妥協は許されない。利用する学生や教職員にとって魅力あるメニューや価格であることはもちろん、継続的に運営が可能なベンチャーであることが絶対条件となる。そのため出店を希望する学生は、事業開始の動機や概要、想定する顧客数、売上や利益、運営体制、人件費、衛生管理等、細かく設定した事業計画を立て、大学側に提出しなければならないのだ。
学内の選考に通っても、開業までには食品衛生責任者資格や営業許可の取得、税務署への個人事業の開業 届出、消防署による検査等、〝プロ”の飲食店経営者と同じフローが必要になる。綿密な事業計画と、経営を続けるための強い意欲を持った学生 だけが、この「学生ベンチャー食堂」のオーナーとなり得るのだ。
「お弁当、いかがですか」と、授業後の学生に声かけ。
高校生の頃から希望 熱意買われ合格
この秋、「学生ベンチャー食堂」7店舗目のオーナーとして第一歩を踏み出したのが、「彩食菜」の木村海音さんだ。小学生の頃から、仕事で忙しい親の代わりに、楽しみながら食事を作っていたという。
木村さんは事業計画書を作成するにあたり、110名の学生に事前アンケートを実施。その結果から学生の栄養不足を認識し、野菜や魚中心のメニューを考案した。
また、現在入っている他の2店舗 はおぼんに載せて提供するイートイン形式がメインだが、効率を考え弁当形式のみで売る経営戦略を立てた。さらに学業と両立しながら無理なく続けるため、営業は週3日に絞った。
原科学長はオープニングセレモニ ーで、何より合格の決め手になった のは、高校生の頃からCUCの「学 生ベンチャー食堂」に関心を持ち、 挑戦したいと希望していた木村さん の熱意だったと語った。
経営者目線で考えることの難しさを実感
運営に関しては、CUCの学校法人が委託する株式会社CUCサポートが指導しているが、什器類や消耗品、原材料費等は学生が負担する。「店舗は教室である」という考え方から、在学中はテナント料は無料。またCUC学生をアルバイトとして採 用する場合に限り、1人あたり1日最大6時間、2人分までの人件費を大学が負担する。「彩食菜」では、木村さんの友達を中心にアルバイトを採用しているが、 一方で苦労もあるという。「従業員への言葉遣いに気をつけなければならないし、スタートは一緒でも、全体の要領をわかっていないと、経営者という立場から教えることができません」
普段は友達でも、店舗での立場は 経営者と従業員。距離の取り方も〝学び”の1つなのかもしれない。出店期間は1年単位で、大学が経営成績を確認した上で、継続可否を判断する。お隣の「中華食堂つばき」は、「学生ベンチャー食堂」が始まった当初から7年続く〝老舗”。 12 年に卒業した学生が今も経営している。学外に2号店をオープンしたこともある人気店だ。
自身も「卒業まで続けたい」と語る木村さんは、不安だらけだったオープン前に比べ、今は楽しみのほうが大きいという。「今後も学生の希望を反映しながら、 メニューを追加していきたい。構想しているのは、焼き鳥丼とオムライス。就職についての希望は未定ですが、卒業後もいつか飲食店を運営できたらと思っています」
19 歳の経営者、木村さんの挑戦は 始まったばかり。近くに立ち寄った 際は、「学生ベンチャー食堂」でラン チはいかが?
彩食菜(いろどりしょくざい)
場所:
千葉商科大学「学生ベンチャー食堂」
〒272-8512 千葉県市川市国府台1-3-1
営業日:
月・木・金 11:00~12:50
(定休日)火・水・土・日・祝日
※ 他、大学の夏季休暇・年末年始等の長期 休暇や大学の休校日
メニュー:
牛丼 400円
生姜焼き弁当 450円
魚のフライ弁当 450円