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平成の国政選挙を振り返る

二大政党制は幻だった!?
平成の国政選挙を振り返る

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 2019年4月30日、30年間続いた平成が終わる。平成の国政選挙は、衆議院の解散がなければ17年10月に行われた第48回衆議院選挙までということになる。この間、「山が動いた」平成元年(1989年)の参議院選挙に始まり、20回の国政選挙が行われた。今回はその20回の選挙を振り返りながら、平成の政治の動きをおさらいしてみた。なお、当選者数等はすべて追加公認、同時に開催された補選での当選者を含む。

 

平成元年(1989年)7月23日
第15回・参議院選挙
自民党大敗で「山が動いた」社会党が躍進

●投票率=65・0%

 消費税導入、農作物の輸入自由化という国民に大きな痛みを強いる争点に加え、前・竹下内閣の下で起こったリクルート事件、宇野首相の女性問題という逆風もあり、自民党が改選議席のほぼ半分を失う大敗。逆に社会党が土井たか子委員長を先頭に「マドンナ旋風」で大躍進。委員長自ら「山が動いた」と表現した歴史的な与野党逆転が起こった。自民党は結党以来初めて、選挙後の追加公認を合わせても参議院での過半数を失い、以後平成28年までその状態が続く。宇野首相は退陣し、海部内閣へと移行。

 

平成2年(1990年)2月18日
第39回・衆議院選挙
野党は消費税を争点にするも不発で自民安定多数

●投票率=73・3%

 争点はまず消費税で、野党は前回の参院選に続いて消費税廃止を訴え、自民党は見直しを掲げた。自民党は多少議席は減らしたものの、安定多数を確保した。野党は社会党こそ大きく議席を増やしたが、公明・共産・民社は揃って議席を減らしている。社会党と公明・民社党の意見の相違が目立ち、両党が自民党に近い政策を打ち出すようになり、後の自公民体制のきっかけとなった。

 

平成4年(1992年)7月26日
第16回・参議院選挙
PKOを争点に、自民は堅調、社会は停滞

●投票率=50・7%

 政治改革関連法案の廃案を受けた海部首相が衆院の解散をほのめかし、自民党内の猛反発で内閣総辞職。後を受けた宮沢内閣は選挙直前に、自衛隊の海外派遣を認めるPKO(平和維持活動)法案を国会で通している。このPKOの是非が選挙の争点になった。結果は自民党が大きく議席数を戻し、前2回の選挙で躍進した社会党は勢いが止まる結果に。

 

平成5年(1993年)7月18日
第40回・衆議院選挙
ついに政権交代。非自民の細川連立内閣が発足

●投票率=67・3%

 東京佐川急便ヤミ献金事件などで政治不信の動きが強まる中、宮沢首相が公約としていた衆議院の選挙制度改革を先送りしたため、野党は内閣不信任案を提出。自民党では最大派閥の竹下派が分裂し、小沢一郎氏や羽田孜氏らが不信任案に賛成したため、過去4回しか可決されたことのない内閣不信任決議が可決。宮沢首相が衆議院を解散すると、自民党から離党者が相次ぎ、小沢・羽田派らは新生党を、武村正義氏らは新党さきがけを結成するなど、新党ブームが起きた。自民党は過半数には届かなかった。一方で新党は大きく議席を伸ばし、日本新党の細川護煕代表を首相とする非自民の連立内閣が発足。政権交代が実現した。

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平成7年(1995年)7月23日
第17回・参議院選挙
連立内閣初の国政選挙は社会大敗も自社政権維持

●投票率=44・5%

 非自民の連立政権は、早々に細川首相が辞任。小沢氏が推す羽田氏が首相になった。しかし社会党とさきがけが連立を離脱し、64日という短期間で総辞職。その後行われた内閣総理大臣指名選挙で自民党は社会党の村山富市党首に投票。自民・社会・さきがけの連立体制による村山内閣が発足した。この体制で行われた選挙は3党で過半数の議席こそ獲得したものの、社会党は過去最低の議席数に。国政選挙を経ずに政権が変わるという状況の中で政治不信が強まり、投票率は過去最低の40%台に留まった。

 

平成8年(1996年)10月20日
第41回・衆議院選挙
小選挙区比例代表並立制導入。自民党政権復活

●投票率=59・7%

 衆院選の選挙制度が、中選挙区制から小選挙区比例代表並立制に変わって初の選挙。2大政党化しやすい制度であるため、野党勢力が結集して新進党を結党し、自民党を超える数の候補者を擁立。結果は自民党が議席を微増させ、新進党は微減という結果に。社民・さきがけは、直前に多くの議員が離党し民主党に参加したため議席を大きく減らした。

 

平成10年(1998年)7月12日
第18回・参議院選挙
バブル後遺症の本格化。不景気で自民党が敗北

●投票率=58・8%

 前回衆院選での事実上の敗北を受けて新進党が分裂。北海道拓殖銀行や山一證券の破綻などバブル崩壊・後遺症が本格化。自民党は議席を大きく減らし、橋本首相は退陣。単独過半数を得られなかった自民党は小沢氏率いる自由党、公明党と接触し、小渕恵三内閣は自自公連立政権となった。この選挙から投票締め切り時間が18時から20時に延長され、不在者投票もしやすくなるなどの制度変更があり、投票率は前回の参院選より15%近く上がっている。

 

平成12年(2000年)6月25日
第42回・衆議院選挙
森首相の失言から解散。自公保連立が継続

●投票率=62・5%

 平成12年4月、小渕首相が脳梗塞で倒れ5月14日に死去。森内閣が発足した。自民・公明と、自由党から分裂した保守党の自公保連立政権。発足当初から森首相の不適切発言がたびたび指摘され支持率も低下、2ヵ月足らずで解散。民主は32議席伸ばしたが過半数には大きく届かず、森首相による自公保連立政権が継続した。衆院選でも投票締め切り時間は18時から20時へと2時間延長され、投票率は3%ほど上がっている。

 

平成13年(2001年)7月29日
第19回・参議院選挙
小泉政権初の国政選挙で与党3党が過半数確保

●投票率=56・4%

 支持率が18%にまで落ちたことを受けて森内閣が退陣し、自民党総裁選で「自民党をぶっ壊す」と宣言して勝った小泉純一郎氏が首相になった。発足時の支持率は

80%を超え戦後最高。その余勢をかった選挙で、自民・公明・保守の与党3党は改選議席を上回り過半数を確保した。

 

平成15年(2003年)11月9日
第43回・衆議院選挙
マニフェスト選挙で民主が躍進し、2大政党化へ

●投票率=59・9%

 小泉首相が高支持率と参院選の勝利を受けて自民党総裁選で再選され衆議院を解散。直前に民主党と自由党が合併し、衆参合わせて200議席を超えた。同年に公職選挙法が改正され、実現性のある形で政権公約を明文化したマニフェストが配布できるようになった。高速道路4公団の民営化などを掲げた自民党は237議席で過半数に届かず、追加公認で240の過半数に乗せた。一方で民主党は選挙前から大幅に増やし177議席に達した。

 

平成16年(2004年)7月11日
第20回・参議院選挙
小泉構造改革が争点。2大政党化が進む

●投票率=56・6%

 痛みを伴う構造改革、年金改革、自衛隊のイラクでの多国籍軍参加問題など、小泉内閣の支持率が伸び悩む中で行われた選挙。民主党が議席を伸ばし、自民党を1議席上回る50議席を獲得、改選第1党となった。

 

平成17年(2005年)9月11日
第44回・衆議院選挙
郵政解散で自民が圧勝、民主が敗北

●投票率=67・5%

 小泉首相が政治生命をかけると公言していた郵政民営化法案は自民党内でも反対が多く、衆院では5票差で可決したものの、参院では否決された。すると小泉首相は「国民の信を問う」として即日衆議院を解散。そして法案に反対票を投じた議員を党公認にせず、刺客と呼ばれる候補を送り込む。この自民党内での争い「小泉劇場」に野党は影が薄くなり、民主党は64議席を減らす大敗。

 

平成19年(2007年)7月29日
第21 回・参議院選挙
民主が圧勝し、自民が初の参院第1党落ち

●投票率=58・6%

 小泉首相の任期満了で安倍晋三氏が首相となった。郵政造反組の復党で世間の批判を浴び、また閣僚の愛人問題や架空事務所費の計上など不祥事も相次ぐ。そんな中で行われたこの選挙では、自民党は37議席と歴史的な大敗を喫し、初めて参院第1党の座を追われた。野党は非改選議席と合わせて137議席で過半数を占めたため、ねじれ国会となった。この後、安倍首相は続投したものの、体調不良で辞任した。

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平成21年(2009年)8月30日
第45回・衆議院選挙
民主党が戦後最多議席を獲得して政権交代が実現

●投票率=69・3%

 ねじれ国会で政権運営に苦慮した福田康夫総理は、民主党の小沢一郎氏と進めかけていた大連立も失敗して辞任し、麻生太郎氏が総理就任。選挙を経ずに3回の首相交代が行われたことに国民の反発は強く、自民党は選挙前より181議席減らすという前代未聞の大敗で、1955年の結党以来初めて衆院第1党を失う。民主党は308議席を獲得して大勝。鳩山由起夫代表が首相に。

 

平成22年(2010年)7月11日
第22回・参議院選挙
鳩山内閣の迷走で民主大敗、ねじれ国会へ

●投票率=57・9%

 前年、民主・社民・国民新党による非自民連立政権が発足したが、鳩山首相は「コンクリートから人へ」「(米軍の普天間基地移設は)最低でも県外」といった発言や、行政の無駄をあぶり出す「事業仕分け」などで高支持率を集めていた。しかし公約のほとんどを果たせず、ついには首相辞任に至り、菅直人内閣が誕生した。迎えた選挙で民主党は44議席に留まり、51議席を獲得した自民党が改選第1党を奪還。与党合わせても過半数を下回り、政権交代前とは逆の立場での「ねじれ国会」となっている。

 

平成24年(2012年)12月16日
第46回・衆議院選挙
自民圧勝で政権交代。自公連立の第2次安倍内閣

●投票率=59・3%

 政権与党であった民主党は、東日本大震災や消費税増税を巡る対応で支持率が下がり、離党する議員も相次ぎ、衆院で単独過半数を割る状況で選挙を迎えた。結果は、自民党が118議席から294議席に増やす圧勝。公明党も10議席増やし、自公で3分の2を獲得した。一方で民主党は選挙前の4分の1以下という大敗。選挙後、自民・公明の連立による第2次安倍内閣が発足した。

 

平成25年(2013年)7月21日
第23回・参議院選挙
自民が議席倍増し、ねじれ国会解消。安倍政権安定

●投票率=52・6%

 前回衆院選で政権を奪取した安倍首相の下での選挙。アベノミクスの是非や原発への対応、消費税、TPPなどを争点に行われ、与党である自民と公明が圧勝し衆参のねじれ状態を3年ぶりに解消した。民主党は惨敗。同年4月に公職選挙法が改正され、これまで規制対象だったインターネットによる選挙運動が解禁。ウェブサイトやSNS、動画チャンネルなどを開設する候補者が増えた。

 

平成26年(2014年)12月14日
第47回・衆議院選挙
自民が291議席と圧勝。民主は代表が落選

●投票率=52・7%

 前回衆院選前に民主・自民・公明の3党で消費税増税についての合意があり、平成26年4月には税率が5%から8%へと引き上げられた。その合意では平成27年10月には10%へと再び引き上げられる予定だった。しかし安倍首相はその時期を引き延ばすため「国民の信を問いたい」として解散し、選挙が行われた。野党に政権交代の可能性が感じられないことから、投票率は衆院選で戦後最低の52%。結果、自民が選挙後の追加公認を含めて291議席を獲得する圧勝で、連立を組む公明と合わせて全議席の3分の2を維持した。民主党は海江田万里代表が小選挙区で敗れ、比例でも復活できなかった。

 

平成28年(2016年)7月10日
第24回・参議院選挙
自民と野党統一候補が戦い、自公が議席増

●投票率=54・7%

 民主党と維新の党が合併した民進党をはじめ、共産党、社民党、生活の党、山本太郎となかまたちの4党が選挙協力し、候補者を調整して自民党と対決した選挙。安倍政権の政策評価が争点になった。結果は自民・公明の与党両党で改選議席の過半数を上回る70議席を獲得。公職選挙法が改正され、選挙権年齢が18歳以上へと引き下げられ、約240万人が新たに有権者となった。そして、1票の格差是正のため、隣接する2つの県を1つの選挙区にするいわゆる「合区」が初めて導入されている。

 

平成29年(2017年)10月22日
第48回・衆議院選挙
野党が分裂2極化。自民が284議席で安定勝利

●投票率=53・7%

 衆議院議員の任期を1年近く残す中で、安倍首相は突然衆議院を解散した。森友学園と加計学園のいわゆるモリカケ問題などで低迷していた支持率が回復を見せ、民進党が分裂するなど野党の再編が行われている渦中での選挙。野党は、東京都の小池百合子知事が代表を務める希望の党と日本維新の会の保守系、共産党と民進党左派グループが集まった立憲民主党、社会民主党というリベラル系に大きく分かれた。

 結果は自民党が選挙前と同じ284議席。公明党と合わせて憲法改正の発議に必要な、全議席の3分の2を上回る議席を獲得して圧勝した。当初期待の声が大きかった希望の党は議席を減らし、立憲民主党が野党第1党に。

 

次の時代の選挙は?

 次回の国政選挙は元号が変わったばかり、2019年7月(予定)の参議院選挙になりそうである。

 小選挙区比例代表並立制という選挙制度は、派閥選挙による金銭授受の蔓延と一党優位政党制の転換をめざし、衆院選挙において中選挙区制に代わって平成8年(1996年)から導入された。だが結果は、議員全体を見ればポピュリズム的政治思考の蔓延が指摘され、自民党内では派閥の弱体化が党執行部の強権化につながっている。政権与党執行部の強権化とは、官邸の強権化である。

 政権獲得をめざすには、より大規模な勢力にならねばならず、多様な政治信条、政策志向の議員の寄り合いが、非自民の離合集散の要因ともなっている。

 そして最も問題なのは、有権者の半数近くが投票に行かない状態。地方選挙の低投票率はさらに深刻だ。新しい時代となってもこの状態が続くとしたら、これこそまさに民主主義の危機と言えるだろう。

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