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INTERVIEW 住まいと投資

  • 2019/06/21 15:46
  • カテゴリー:住宅

需要が多く供給が少ない“戸建賃貸”
これからの投資物件の主役に

福田 功 洋館家本店グループ代表

 

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ふくだ・いさお
1952年生まれ。慶応大学経済学部卒。栃木県鹿沼市を拠点に不動産仲介・管理を行う洋館家本店グループの総括代表。洋館家本店は2005年から低価格・高品質の戸建賃貸住宅の全国展開を本格的に行い、さらに「住宅の通信販売」の構想を発表するなど、業界で注目を集めている。著書『RA(戸建賃貸)投資マニュアル』(共著)など。

 

 賃貸住宅の空室が増え続ける中、「需要が多く供給が少ない」とされる戸建賃貸住宅。その専門メーカー・洋館家本店グループの福田功代表に、戸建賃貸のメリットと今後の可能性について聞いた。

 

「マイホーム」と胸を張れる賃貸住宅

── 洋館家本店グループは戸建賃貸住宅専門メーカーとして全国展開をされています。どのような商品をどのように販売しているのですか。

 当社グループは「高品質・低価格」の住宅を、全国一律「統一価格」で販売しています。販売・施工は、本部である当社と全国1500社の施工店・設計事務所・販売店・資材メーカーという会員企業が行っています。日本の住宅の最も大きな問題は、価格が高く、かつ基準が不明朗だということ。それを解決していくために、当社では規格住宅を統一価格で販売することにしたわけです。

 全国で多数販売する住宅の資材を本部が一括購入しますから、一流メーカーの資材も低価格で入手可能です。もちろん、寒冷地仕様や付帯工事、離島などへの資材運賃といった追加料金も生じますが、それも明確化しています。

 規格住宅ですから注文住宅とは違い、購入者の個別のご要望に応えることはコストが上がってしまうため、なかなかできません。個別注文はすべてオプションになりますし、そういった営業面も含めたコストを下げることで低価格が実現するわけです。低価格でも品質を落とさない。当社の商品は2020年の省エネ基準に適合していますし、さらにその先の2030年に国が目指す住宅の水準をほぼクリアしています。今建てても、20年先まで十分通用する住宅です。

 全国の会員企業はこの規格住宅を住宅購入者に向けても販売していますが、私たちが主力としているのは「戸建賃貸住宅」です。戸建の賃貸というのは昔からありましたが、住宅としての品質は必ずしも高いものではなかった。貸家として建てる側はコストを抑えたい。その結果、「安かろう悪かろう」の住宅になっていたのです。当社が目指したのは、借りてはいるけれども「マイホーム」と胸を張れる住宅でした。そしてそれを実現したのです。

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「買うから借りる」への意識変革が必要

── 賃貸住宅は供給過剰と言われています。そのような中で、賃貸住宅への投資は成り立ちますか。

 賃貸住宅の全てが供給過剰というわけではありません。連棟、集合賃貸は確かに供給過剰です。しかし、戸建の賃貸住宅は不足しています。供給過剰の集合賃貸住宅にしても、「買えないから借りる」だけではなく、「一生借りる」というニーズに応えられる物件なら残るでしょう。「家は借りるもの」と考えて借りるのですから、それぞれのライフステージ、ライフスタイルに応じた住まいが選ばれるようになります。「いずれ一戸建」ではなく、「最初から一戸建」という選択をする人も少なくないわけで、潜在化していた戸建賃貸のニーズは一気に顕在化するはずです。

 もちろん、集合住宅を選ぶ人もいるでしょう。でも、賃貸を経営したり投資したりする側は、これまでのように「賃貸やるなら何が何でもアパートで」ということにはならなくなります。東京都心に3LDKの戸建賃貸を建てろとは言いませんが、郊外のバス通勤圏などであれば駐車場付きの戸建賃貸を建てたほうが、集合住宅よりも効率的な投資ができます。また、地方都市の市街地の小さな土地に建つ戸建賃貸などは、どのエリアでも大変人気です。

 土地活用や投資をお考えの方には、立地や市場環境、投資と回収の計画などを慎重に考慮すれば、戸建賃貸という選択が大いに考えられると申し上げたい。新築の戸建賃貸を待っている方は、全国にたくさんいらっしゃるのですから。

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投資額が少なくリスクも少ない戸建賃貸
 投資額を1棟分1400万円、家賃を14万円(年間収入168万円)とした場合、固定資産税、保険料など必要経費を除いた収入は年間150万円程度。2棟以上を同一敷地に同時着工すれば当然コストは下がる。下表は建設費を借り入れで賄った場合の例。家賃相当をそのまま返済に充てれば、10年後からは家賃全額が収入となる。問題は1400万円で「10年以上住み続けたい」建物を作れるかどうか。洋館家本店は、この価格帯で十分建築できる高品質な規格住宅商品を販売している。

 

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貸し手・借り手・作り手の共存利益を追求

── それでも戸建賃貸は「入るかゼロか」で、空室のリスクを心配する声があります。

 もちろん需要が高く供給が少ないからといって、戸建なら何でもいいというわけではありません。集合住宅同様、品質と立地が大切です。当社ではお客様からのご要望に際し、立地条件を確認します。地形が悪くても、玄関の方向がどちら向きであろうとも建てられるのが当社の商品の特長ですが、だからといって借り手がつかない場所には建てません。建てる前に入居者が決まっている、あるいは建てている最中に入居者が決まる、という形が「あるべき姿」と施主さんにはお話ししています。

 一部の業者のような「建てさせればいい」という商売、建てる前から「家賃保証付き」というやり方は、最初から賃貸経営の提案を放棄しています。誰かが損をすることで誰かが得するという相反利益では、商売は長続きしません。賃貸住宅経営で言えば、それに関わる貸し手、借り手、そして作り手の3者の共存利益を追求していかねばならないということが、当社の経営理念の1つであり、私の信念です。

 

 

 

多様な住まい方 多様な貸し方

── いずれ「住宅を買う」というニーズはなくなると考えておられますか。

「住宅を所有する」というニーズがなくなるとは思いません。ただ、多様な生き方があるように、住まい方も多様になってくるでしょう。だからこそ「買わない」という選択に応えるためにも、賃貸も多様化していかなければならないと思います。

 入居期間が長く、賃料も高めに設定できることが貸し手側の戸建賃貸のメリットですが、「分譲のローン返済と同額以上を長く払うなら買った方がいい」と考える借り手もいるでしょう。だったら「10年以上ちゃんと家賃を払ってくれたら、その家は残存で買い取ってもらってもいい」という契約だって、あってもいいわけです。現状では住宅の割賦販売は難しい面が多くありますが、ニーズが高まれば法律も整備されていくでしょう。

 要は、多様な住まい方があるならば、多様な貸し方もあるべきだということ。住宅産業も高度経済成長期のビジネスモデルから脱却し、新しい売り方を創っていくべきだと思います。

 住宅を作り販売する私たちは、買い手が住む人であるときはもちろん、投資する人が顧客である場合も、そこに住む人のことを考える。まずは長く住んでもらえる家作りを提供してまいります。また、ライフスタイルに応じた住まいを求める人をターゲットにするならば、経年してもすぐに入居者が決まるさまざまな住まいのモデルを提供し、さらには暮らし方を提案する。そういうビジネスをしていかなければならないと思います。(本誌特集取材班)

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house201812_7.jpg『RA投資マニュアル』 中央経済社 2600円+税

 福田氏が税理士の黒木貞彦氏と共著で著した一般投資家向けの本。すでに430万戸もの空室が生じ供給過剰となっているアパートや賃貸マンションへの投資をやめ、需要があり「200万戸が不足」といわれる戸建賃貸住宅への投資に目を向けようという提案をわかりやすく行っている。
 内容は①「RA 投資」の幕開け、②「RA 投資」のプラン、③市場は「RA」を望んでいる、④「RA」の勝負は立地で決まる、⑤「RA 経営」の必勝法伝授、⑥不動産活用の「正しい知識」…の全6章からなり、資金計画や返済方法、家賃設定方法などが具体的に示されている。
 タイトルの「RA」とは、フランス語の「貸家」を意味する「Une maison a louer(ユヌ・メゾン・アルエ)」の「アルエ」の音からとったもので、「戸建賃貸」が従来の「貸家」の概念を脱することを願っての造語だという。

 

戸建賃貸経営は自己所有地の有効活用

『RA投資マニュアル』によれば、戸建賃貸経営投資が成功する秘訣は自己所有地に建てること。土地も借り入れて建物を新築すると、投資回収はなかなか難しい。自己資金があるならば土地は現金購入し、建築部分を借り入れで賄うのが得策。このように、同書では「やらないほうがいいこと」「失敗の要因」も丁寧に解説している。

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