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日本語学習者に新たなアプローチ

新しい語学学習

日本語学習者に新たなアプローチ

経験豊富な高齢者から日本語を学ぶ

Helte(ヘルテ)

 

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 日本語を学びたい外国人と、誰かの役に立ちたいと考える高齢者をインターネットによって結ぶベンチャー企業がある。後藤学社長が率いる株式会社Helte(へルテ)だ。

 いずれは日本で働きたいと考える外国人にとって、日本文化に精通している高齢者と会話をすることのメリットは大きい。日本語を話す機会を得るとともに、日本的な考えに触れたり、先生役の高齢者の人生哲学を知ったりすることもできる。

 一方、高齢者はオンラインビデオ通話サービス「Sail(セイル)」を通じて海外の若者と会話をすることで、自分の部屋にいながら異文化体験ができ、社会参加にもつながる。

 テレビなどでも注目を集める同社の事業内容を見てみよう。

※「Sailプロジェクト」の詳細はhttps://sail.helte.jp/guide

 

画面の向こうに座るのは着物姿の84歳

 「将来の夢は、日本のゲーム会社で働くこと」そう話すのは、日本のアニメをきっかけに小学生のころから日本に興味を持ち、独学で日本語の勉強をはじめたというタイの学生サランさん(22歳)。現在は大学でプログラミングなどの情報技術とともに日本語を学んでいる。

 サランさんが通うバンコクの大学は日本語教育に力をいれており、Helteのサービスである日本に住む高齢者との日本語の会話練習をカリキュラムに取り入れた。日常会話はもちろんのこと、敬語の使い方や初対面の場合の挨拶の仕方といった作法も、学生が質問すれば画面の向こうから丁寧に教えてもらうことができる。

 サランさんと日本語で会話をするのは84歳の田口陽子さん。日本文化に親しんでもらおうと、着物を着てパソコンの前に座る。また、自分で作ったぬいぐるみなども用意し、学生が理解しやすく、また楽しく会話ができるよう工夫している。

 田口さんは学生との会話では丁寧な言葉遣いを心がけている。学生が良い言葉を身につけて、相手から品の良い人だと思ってもらえるようにという親心からだ。

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バンコクの大学と日本の高齢者福祉施設を結ぶ。

 

 

日本語で会話しながら社会参加を果たす

 田口さんが生活するのは、高齢者福祉施設だ。こうした施設では、入所者に向け

たサービスとしてダンスや料理、手芸といったさまざまなアクティビティを用意している。そのひとつとして、海外の学生とのSailによる会話をHelteが提供している。SailはSkype(Microsoft製)などと同様のビデオ通信機能(WebRTC)を有したサービスで、オープンソースと言われる公開技術仕様に基づいて開発されたもの。

 Helteの語学サービスのきっかけとなったのは、後藤社長自身の体験だ。大学時代、アメリカのワシントンとインドのゴアに留学したのち、世界30ヵ国を旅した。帰国後、英語力を維持させたいと思いつつも、日本では英語を話す機会が多くはない。留学と放浪の旅で英会話教室に通うお金もない。

 そんなときに、母の古くからのアメリカ人の友人とSkypeを通じて話す機会があった。老人ホームに暮らすその女性は80歳をこえていたが、豊富な人生経験とそれによって得た彼女自身の哲学が後藤社長を大いに刺激した。それから、たびたびSkypeで話すようになった。相手の意見に共感したり、反対意見をぶつけたり、ときにはケンカもしたという。英語の勉強になっただけでなく、非常に有意義な時間だった。

「高齢者との会話を事業として成立させられるのではないか」そう考えた後藤社長は間もなく、Helteを立ち上げた。

 タイは親日家が多く、また日本語学習者が増加していることから、サービスの提供先として適していると判断した。日本のお土産を持って、日本語学科がある大学や語学学校を片っ端からまわっていった。文法や発音を学ぶだけでなく、日本文化や日本の風習を教えるクラスもあり、同社が提供するサービスならばそうした授業内容とリンクさせることができるとアピールして顧客を増やしていった。

 同時に、日本語の会話をしてくれる高齢者も探さなくてはならない。同社のビジネスモデルは、高齢者施設と日本語を教える学校の双方からサービス料を徴収するというものだ。そのため、アクティビティとして外国人と日本語で会話することに興味を持ってもらう必要がある。アクティビティをしているその時間を楽しむだけでなく、社会参加できることや可能性にメリットを感じてもらえるよう説明した。

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「Helte」はデンマーク語で「夢や希望を与える人」という意味。サービスを通じ、世界全体の活性化を目指す。

 

国や年齢を超えた交流を可能に

 このサービスにより、日本語を学んだ学生が来日して日本社会で働いたり、高齢者が元気でやりがいを持って生きていくようになれば、サービスを利用する当事者だけでなく、日本社会全体への貢献もできる。

 さまざまな広がりを持てる点も、Helteのサービスの魅力だ。日本語学習の観点からは、インドネシアやベトナムなどにサービス範囲を広げるとともに、日本語を学んだ学生に対する就労サポートや広告機能を追加することも後藤社長は考えているという。

 さらに、ヨーロッパなど高齢化が進む先進国と、平均年齢が若く世界に活躍の場を求めるアジアやアフリカの国々を結ぶことで、さまざまな言語や文化を交流させることも可能だ。

「サービスの受け手である語学学習者と高齢者だけでなく、日本全体、ひいては世界全体が活性化する"win –win –win"の三方良しを可能にできるサービスだと信じています」

 後藤社長の社会起業家としての歩みは始まったばかりだ。

 

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後藤 学
株式会社Helte代表取締役

ごとう・まなぶ 1991年、千葉県柏市生まれ。大学では国際ビジネスを専攻。卒業後、ITコンサルタントとして自動車業界、製造・流通業界などのクライアントに対してITシステムの導入、地域戦略、業務改善サービスを提供。2016年に株式会社Helteを設立。https://www.helte.jp/ja/

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